アトピー性皮膚炎はアレルギー、特に卵アレルギーとの関係が強いとされる皮膚の病気で、未だに発症原理は解明されていませんが、徐々に予防策などが明らかになってきています。
2014年には国立成育医療研究センターにて新生児期からの全身保湿ケアによってアトピーの発症率が30%以上低下したとの研究結果が報告されました。
つまり、スキンケアとアトピー予防には密接な関係がありそうです。
また、アトピー性皮膚炎が発症した後の皮膚はセラミドの含有数が少なく、水分保持が難しくなるため、乾燥傾向が強くなります。
というわけで、アトピー性皮膚炎が発症した後にもスキンケアは重要というわけです。
目次
アトピー性皮膚炎とベビーソープの関係について
先程挙げたようにアトピー性皮膚炎の予防には全身保湿ケアが有効となります。
保湿ケアなのでベビーソープのような洗浄系化粧品ではなく、ベビーローションやベビークリーム、ベビーオイルなどの保湿化粧品にしか関係がなさそうに思えますが、そうとも限りません。
何といってもお肌のバリア機能を支えている肌の角質層にあるセラミドや天然保湿因子と皮脂の流出につながるのがベビーソープのような洗浄系化粧品だからです。
皮脂は数時間で新たに作られますが、角質層のセラミドや天然保湿因子は失われればターンオーバーによってしか回復しないため、かなりの日数が必要となります。
確かにベビーローションやベビークリームなどで保湿ケアすれば、お肌のバリア機能をサポートし、アトピー性皮膚炎の発症とも関係するアレルゲンの侵入からお肌を守ることにつながりますが、そもそもお肌のバリア機能をむやみに低下させないためにもバリア機能の低下に大いに関係するベビーソープ選びはかなり重要だと言えます。
ではどのようにベビーソープを選ぶのが良いでしょうか?
肌を乾燥させにくい洗浄成分かどうか
ベビーソープでもベビーシャンプーでも「洗う」ことを目的とする化粧品全てに共通して言えることですが「洗浄成分の種類」が最も重要となります。
洗浄成分には種類がたくさんあり、特徴がそれぞれ異なります。
よく石鹸と合成界面活性剤の比較が用いられ、石鹸がいかに安全でしっかりと洗えるかをアピールされていますが、合成界面活性剤が全て悪というわけではなく、成分によっては肌に優しく、洗い過ぎない適度な洗浄力の成分もあります。
大切なことは「赤ちゃんの肌にも優しく、汚れは落とすけど、角質層のセラミドや天然保湿因子は残してくれる洗浄成分」が使われているかどうかです。
界面活性剤は種類が本当にたくさんありますので、一つ一つの成分の特徴を把握することは困難ですが、グループごとにカテゴライズし、グループごとの特徴を押さえるだけでも見分けやすくなります。
洗浄成分のグループごとの特徴
硫酸系界面活性剤
ラウリル硫酸Naやラウレス硫酸Naなど◯◯硫酸◯といった表記で表される洗浄成分です。
洗浄力も肌への刺激も強い成分なのでデリケートな赤ちゃんのお肌の洗浄には向いていません。
スルホン酸系界面活性剤
オレフィン(C14-16)スルホン酸Naが代表的で、生分解性には優れますが、洗浄力や刺激もそれなりにある成分なのでベビーソープにはおすすめできません。
ベタイン系界面活性剤
コカミドプロピルベタインやラウラミドプロピルベタインなど◯◯ベタインで表されることが多い成分です。まれに成分名にベタインが入っていないベタイン系界面活性剤もあります。
特徴としては低刺激でマイルドな洗浄力なのでベビー向けの洗浄成分としてよく使われています。
アミノ酸系界面活性剤
ココイルグルタミン酸TEAやココイルアラニンTEA、ラウロイルアスパラギン酸Naといった◯◯+アミノ酸名+アルカリ基(NAやTEA、K等)となっています。
アミノ酸名が入っているのでわかりやすいと思います。アミノ酸系はしっとりというかヌメリが残る感じの洗い上がりで、肌にもやさしく、洗浄力も強すぎない洗浄成分がほとんどです。ただし、ラウロイルサルコシンNaだけは硫酸系に匹敵するような刺激と洗浄力があるため注意が必要です。
グルコシド系界面活性剤
デシルグルコシドなど◯◯グルコシドで表される成分で、肌に優しく強すぎない洗浄力の成分です。
酸性石鹸系界面活性剤
ラウレス-4カルボン酸Naやラウレス-5酢酸Naといった成分です。お肌への刺激は少ないですが、洗浄力は高めなので汚れはしっかりと落としてくれます。
コラーゲンやシルクベースの界面活性剤
ココイル加水分解コラーゲンNaやラウロイルシルクアミノ酸Naといった保湿効果を持った界面活性剤です。洗浄力が弱めなので、汚れ落としにはあまり向いていませんが、お肌への優しさは申し分ありません。高級な成分です。
天然の界面活性剤
レシチンやサポニンといった自然界に存在する界面活性剤があります。ただし、洗浄力はそれほどなので、メインに使われることはありません。
石鹸
成分名でいうと「ラウリン酸 水酸化Na」「石ケン素地」などで表される成分です。アルカリ性の性質を持ち生分解性に優れ洗浄力は高めです。
上記が界面活性剤のグループごとの特徴となります。
1つのベビーソープに界面活性剤が1つしか配合されていないということは石鹸を除けばほとんどなく、基本的に洗浄成分の多くは配合率1%以上なので配合量の多い順に記載されます。
洗浄成分は掛け合わせも大事で、メインとなる最も配合量の多い洗浄成分に刺激や洗浄力の強い成分が使われていないことも大事です。
メインは洗浄力が弱いけれど、サブで洗浄力の強い成分を持ってきて洗浄力を高めることもあります。
メインに使われる洗浄成分の種類が一番重要であることは是非知っておきましょう。
アトピーのお肌には優しさが不可欠
アトピー性皮膚炎の場合は、すでにセラミドが減少しお肌のバリア機能が低下しているため、健康的なお肌だと負担にならないような刺激でも大きな負担となる可能性があります。
そのため、上記で挙げた、界面活性剤のグループの特徴で、低刺激なグループに属している洗浄成分であることがポイントとなります。
また、ベビーソープには洗浄成分以外にも色々な成分が配合されており、それら成分一つ一つの刺激もベビーソープとしての刺激に影響します。
アトピー性皮膚炎はできる限りお肌に負担をかけないことが大切なので、洗浄成分だけでなく、全成分がお肌への刺激の強い成分が無添加となっているベビーソープを選びましょう。
保湿効果があればなお良い
ベビーソープにいくら保湿成分を配合しまくったところでベビーローションなどの保湿化粧品にはかないません。
ベビースキンケアの基本としては「洗浄」と「保湿」がセットであるため、ベビーソープで赤ちゃんの全身を洗った後は、ベビーローションなどで保湿ケアしてあげる必要があり、ベビーローションを使うのであれば、ベビーソープの保湿力はそれほど気にしなくても良いのですが、それでもベビーソープ単体で保湿力があるにこしたことはありません。
アレルギーを考慮し、植物エキスや植物オイル系よりも、セラミドやヒアルロン酸、コラーゲン、アミノ酸、PCAといったお肌に存在している保湿成分がベビーソープには好ましいです。
最近はやりの吸着性保湿成分は洗い流した後にもお肌に残って保湿効果をもたらしてくれますが、お肌への刺激が強くなるためおすすめしません。
吸着性保湿成分は原理としては例えば、ヒアルロン酸をカチオン化させて吸着させるわけですが、カチオン化がよくありません。カチオン化することでお肌への負担が大きくなります。
アトピー性皮膚炎にはベビーソープ選びも妥協しない
まとめとなりますが、アトピー性皮膚炎の場合は乾燥しやすいお肌だからベビーローションやベビークリームなどだけをちゃんと選んでおけば良いというわけではなく、乾燥を引き起こすきっかけとも言えるベビーソープ選びもベビーローションと同じくらい大切なのです。
そのため、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんの場合は「お肌に負担をかけない」「お肌のセラミドや天然保湿因子を守って洗える」ベビーソープを選ぶことが大切です。
アトピー性皮膚炎の予防にも、アトピー性皮膚炎を悪化させないためにもベビーソープ選びは妥協しないようにしましょう。